2012年10月 8日

10/5_6 トヨダヒトシ visual diary レポート

写真作家のトヨダヒトシさん、CAPでは久々の上映会。しかも2夜連続でした。

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CAPでは久々、Q2では初めてのトヨダヒトシさんのスライドショーです。
二夜連続で、連作の「黒い月」「白い月」の上映とトークをおこないました。
トヨダさんとスクリーンの設営から客席の設営まで一緒におこないましたが、本当に細やかに入念に準備される方でした。
スクリーンは5m×6mほどに大きく縫い合せた布を用います。
なんだか懐かしいと思ったら数年前のCAP HOUSEでの上映会で中庭に吊った、同じスクリーンだそうです。
パイプに掛けてやや風にそよぐよう、しかし揺れすぎないよう、そしてしわやたるみがなるべく出ないよう、細心の注意を払い最後の最後まで準備されていました。
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当然映写機も入念に調整。
初日の作品、「白い月」では2台の映写機を併用しました。
準備しているとだんだんと外の景色が暮れなずんでゆきます。
実は、2日目に大きな客船が入ってきてQ2の岸壁に停泊しました。
船の灯りが会場に入ってきて、、、、それも暗くならないと分からないものですから丁度開場時間くらいに急遽遮光の布を窓に設置することに。
音も光も、外の環境との関わり具合を調整するのは非常に注意深く行われていました。
スライドで黒/闇が映る時はもちろん一番気になりますが、白も色目がきれいに出るように気を使います。
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今年の前半までトヨダさんはニューヨークに住んでいました。
初日の「白い月」は2006年頃のニュヨークの日々。そして2日目の「黒い月」は日本にやってきて2008年に撮影した写真を選んで構成されているとのこと。
このタイトルはなんなんですかと聴けば、満ちていく状態の月と、逆に欠けていく状態の月の呼称だそうです。
二本とも2010年にスライドショーの作品として構成されたそうです。
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トヨダさんの作品は無音です。そしてライブ、つまりトヨダさんがいつも現場でカローセルを回すボタンを押しています。上映の度に、それぞれのスライドの投影時間は変わり、また時には別のスライドと入れ替えられたりするそうです。
写真を撮影するときは、スライドショーの作品イメージがあって必要な被写体を取材してゆくのか?と伺ってみました。
「映像日記」なのであたりまえではあるんですが、トヨダさんの写真撮影は、読書していて本にハイフンをひくように日常のできごとを撮影しているそうです。
それらを少し経ってからのトヨダさんが構成しスライドショーのシーケンスを制作。その時になってシャッターを何故押したのかが分かることも多々あるそうです。
そしてやっと上映会の日、別の場所、別の時間から取り出された写真たちが、ライブのシーケンスとなって鑑賞者と同じ時空間で発表される。
トヨダさんのビジュアルダイアリーを観ると毎回、音楽を聴いたような気分になります。
「スライドの写真よりも、それが消えていくのを観て欲しいんです」と、言葉をひとつひとつ拾いながら独特のテンポで話された言葉が印象的でした。

shimoda 03活動日誌
コメント(2)

「黒い月」を鑑賞させていただきました。トヨダさんの日常の中にあるひとコマでご本人には違和感が無いのかもしれませんが、ハンセン病の療養施設や知的障害者の施設でのスライドがあります。施設にいる方たちと一緒に生活してでもいないと出くわさない画像があり、まったく同じ目線でその人たちと生活をともにしているからこその、その方たちの表情があります。それはトヨダさんの優しさから出てくるようです。仏さまのような気がします。白い月と黒い月という命名の意味も仏教から来ている由。感銘を受けました。

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