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2004/2/29
「ヒバクシャ〜世界の終わりに」上映会+監督特別講演

AKJの映像作家・鎌ちゃんこと鎌仲ひとみさんの最新作「ヒバクシャ」の上映会。映画の内容はそのままタイトル通り「ヒバクシャ」について、でもいわゆる広島とか長崎の「被爆者」じゃないみたい。監督のトークもあるし、ひさぶりのHIROS特製カレーもあるし、これで1500円はィヤスい!

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開演1時間ほど前に到着、まだ客のいない会場で鎌仲さんと話す。「コマンタレブゥ(笑」「ウィ、サバァ、メルシー」 僕も以前アクトコウベのメンバーだったが、鎌仲さんとは何度か顔をあわしたくらいで実はそれほど面識がない。それでも彼女はいつもこんな調子、なんでも笑い飛ばしてしまうような人だ。でもそういうところが逆に人との距離を感じさせたりもする。いつも少し遠いところにいて、おちゃらけながら厳しい目をしてる。

少し押して監督トークが始まる。作品の趣旨と撮影のエピソードがたんたんと紹介される。劣化ウラン弾で白血病に苦しむイラクの子供、広島で被爆した元日本軍医の活動、米国の核施設周辺に住み被爆を告発した農民。どこをどうとっても面白おかしい話題ではないけれど、そんな話をするあいだも鎌仲さんはずっと笑っている。顔だけみているととてもそんな重々しいことを話してるとは思えない。撮影のきっかけはイラクで会った14歳のラシャという女の子が彼女に残した「私を忘れないで・・」という手紙だったそうだ。

プロジェクターの不調で一回まきもどしのハプニングもあったが、なんとか上映開始。けっこう唐突にはじまる。ラシャの手紙。女性のナレーション(この人の声ぜったい聞き覚えがある!)が撮影の行われた時間軸にそって一人称でストーリーを進めていく。ドキュメンタリー映画をあまり見ることがないせいかもしれないが、クルーの一人になったような感じで少し面白い。映像にぜんぜん悲壮感がないのは普通すぎて妙な違和感がある。特にイラクで撮影されたシーンは、ナレーションがなければただの生活風景だった。きっと一番現実に近い映像なはずなのになぜか現実感が持てないのは、僕たちが演出された映像ばかりを見慣れてしまったせいだろうか? そんなこととはおかまいなしに「ヒバクシャ」のストーリーはたんたんと語られていく。もしかすると目に見えないまま体を蝕んでいく放射能はそんなやり方でしか映像に納められないのかもしれない。カメラは問題の核へと徐々ににじり寄っていく。

映画の終わりはなんだか突然やってきた。尻切れとんぼとというのではないけれど、なんだか問題の本質が見えそうで見えないあたりまできて唐突に「はい、ここまで!」と言われたような気分だ。べつにオチがほしいわけではないけれど、なんとなくモヤモヤとした気分が残る。もしかしたら鎌仲さん自信もそんな気持ちでこの映画の撮影を終えたのかもしれない。そりゃあそうだ。もしオチがそんなに簡単に見つけられるなら、わざわざ結構なお金をかけてドキュメンタリーなんて方法をとる意味はないだろう。そうかんがえるとドキュメンタリー作家っていうのは、なかなか苦悩の多い仕事だなと思った。それはいい意味でも悪いいみでもだけれど・・・

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映画が見終わって、鎌仲さんが笑ってることと、ドキュメンタリーをつくってることの繋がりがなんだかちょっとだけ分かったような気がした。

2002年 ・ 2003年 ・ 2004年

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