<作家プロフィール、ステイトメント>
■Sarah Browne/サラ・ブラウン(彫刻/マルチメディア/インスタレーション)
02年、ポーランド・クラコウ美術アカデミー修了。03年、ダブリンにて彫刻BA主席修了。美術史、デザインで総合研究表彰を受ける。01年ダブリンにて「The Missing Link」、02年ポーランド・クラコウにてパフォーマンス「Cheb z Irlandii Gratis/ Free Irish Scones」、03年ダブリンにて「Green」、04年、中国で「6 x 6 for Ireland」、05年北京現代美術館、上海Art Scene Warehouse、タイのChiang現代美術館などで展覧、06年アイルランド代表作家としてアイスランドで「Site-ations International: Sense in Place」。NY、LA、メキシコ、ダブリンで「Cluster」巡回。

わたしは場所と移動のエコロジーについて言及している。異なった社会が混合する際に行われる文化的翻訳に興味があるのだ。物質と文化消費が呼応するパタンや人々のマスな動向を通し、グローバリゼーションの衝撃がどのように広がるかを考えるのは面白い。毎日の出来事や身体的習慣はマクロポリティックスに反映するか?
わたしは文化人類学的な調査方法を行う。コミュニティーとの共同作業で作品を制作、あるいは仮想の一時的なコミュニティー自体を生み出す事もある。わたしの作品は、インスタレーション、ビデオ、写真になるが、家具や服といったもっと日常的で具体的な物質を用いることもある。食物は、社会的な交換、生産や流通、消費が文化を横断して辿る道筋を知る術、重要な素材だ。つまるところ、ある環境を関係づけ、翻訳してゆく作品を制作しているのだ。

■Micky Donnelly/ミッキー・ドネリー(画家、インスタレーション)
1952年ベルファスト生まれ。76-81年、アルスター大学で美術のBA、MA修了。85-86年、ローマのブリティッシュスクールで北アイルランドアーツカウンシル奨学金、89年には北アイルランド奨学金を受ける。96年、アイルランド美術界の最高権威であるAosdanaのメンバーに選ばれる。その他受賞多数。美術雑誌「Circa」、美術作家の団体「N.Ireland」の設立に関わり、ベルファストの「Ormeau Baths Gallery」設立委員会のメンバーも務めた。アイルランドをはじめ、ヨーロッパ、ニュージーランド、カナダ、メキシコ、アメリカなど多数の展覧会に出展。

今回の作品「The Table of Lost Intentions」は、ジョン・ケージの作品、特に1993年のロサンゼルスでのローリーホーリーオーバー展を観て着想を得た。今回の作品は、変化し続けるインスタレーションで、ものの在り様や本質から様々な意味を生み出すことを意図している。
「ローリーホーリーオーバー」は、ジェイムス・ジョイスの本「フィネガンズウェイク」から引用されている。この本はしばしば人を当惑させるが、巧妙な「意識の流れ」を誘うとも言われている。この、ケージとジョイスの精神の自由な浮遊、偶発的な配列にならい作品を制作する。奇妙な関係性、断片的物語、喪失した意志の再形成。その場でつなぎあわされる各要素は、全く新たな読み解きを生み出すだろう。

■Sean Lynch/ショーン・リンチ(彫刻、インスタレーション)
01年、リムレック工科大学BA修了、04年リムレック大学にてデザインと美術史MA修了、現在フランクフルトHfBK Stadelschuleでサイモンスターリン研究室在席。01年リムレックにて「Ouch!electro」、02年、コークシティカウンシルのパブリックアートプロジェクト「アートトレイル」に参加、03年スライゴアートギャラリーから全国巡回の「Iontas」、04年ベルファストの美術館にて「The Suicide of Objects」、05年デリーで「Damaged Collateral」。昨年は、フランクフルト、ダブリン、リムレック等で展覧会開催。

わたしの実践は、壊れそうな物語や物質の上に形成され、その形跡を仔細に眺め取り扱うことで成立する。そうして文化的記憶の喪失に対峙し、様々な出来事、写真、インスタレーションにより、歴史に対するアクティビズムとして作品を制作する。わたしは再生の過程を再考し、過小評価されたものの意義を見つめ直す。わたしのテーマはいわば歴史の僻地や残り物であり、中心から外れた事柄や物語の中にある。今回は、リチャード・ロングの作品を考えてみた。70年代に作られたランドアートの作品群だ。ロングは作品を撮影し次の仕事へと歩を進める。わたしは彼の作品の「その後」に興味を持った。74年、アイルランドのアラン島で作られた作品「Standing Stones」に着目し、残っているであろう作品の部分を島から日本へ移動し、復旧しようと思う。アイルランドの風景の一部が、別の国に移され顕在化する。

■Danny McCarthy/ダニー・マッカーシー(サウンドアート、パフォーマンス)
ダニー・マッカーシーはアイルランドで最も先端的なサウンドアーティストの一人である。パフォーマンスとサウンドアートにおけるパイオニアとして活躍してきた。国内外で広く活躍し、Ev+Aの最優秀賞をはじめ、多くの受賞を果たしている。またThe National Sculpture Factory と Triskel Arts Centreの創設者であり館長を務めた。CDへの作品提供も多く、広範囲で放送もされてきた。近年、ニューヨークのフランクリンファーナスギャラリーでの「Trace Archives 2000-2005」に参加している。

私の全ての作品の基礎になっているのは聴くという行為だ。今回のツアーでは、日本までの旅行、そして旅行の準備のフィールドレコーディングをしようと思っている。現場に到着後、現場にも依るが、場に即したインスタレーションを行う為の録音をする。インスタレーションの視覚的要素は、この旅からつくられるドローイング、写真などになる。付加的な要素として、しかし同じように重要なものとして、展覧の一部として、ライブサウンドパフォーマンス「Listen Out Loud」を兵庫県立美術館とCAP HOUSEの両方で行う予定である。

■Claire McLaughlin/クレア・マクラフリン(陶芸、インスタレーション)
95年、アルスター大学で美術のBA修了。97年ロンドン、ロイヤルカレッジオブアートで陶とガラスのMA修了。93年、ドネガル郡立美術館で「Heads and Hangings」展。95年、ポートギャラリーで個展。97年、ロンドン・メイフェアのトマスゴードで展覧会。2000年、ドネガル群カウンシルへ新図書館設立記念の作品、01年、新図書館とアートセンターを記念した作品をキャバン郡カウンシルへ、05-06年、ダンガーバンの宅地開発プロジェクトでパブリックアートのコミッションを受ける。アイルランド、英国、ヨーロッパ、米国、オーストラリアにコレクション多数。

人間は、土地や文化、また景観や身近な環境などを形成する自然と分ちがたいという考えが、わたしの粘土を使った制作活動の基礎をなしている。
大地と人は自然の一部であり、オブジェや何かしらの形になってゆく粘土どのひとかけらもすべて、この惑星の物質に戻る。わたしは本来その素材が備えている深い知恵、液体であること、固体であること、展性質、不燃であること、ひびが入っていたり粉砕していたりすることなど、その性質を活性化させようと努力する事で、自然と文化の延々と続く隠喩的な循環を辿ってゆこうと考える。
この交換プロジェクトは、日本とアイルランドの文化の違いと人間にとっての自然という共通項を同時に思索してゆく貴重な機会である。焼成前と焼成。粘土のこのプロセスは、このプロジェクトでの出会いの様々な局面を照らす豊かな参照となるだろう。

■Sean Taylor/ショーン・テイラー(サウンドアート、パフォーマンス、本展覧会キュレイター)
83年ベルファスト・アルスター大学美術MA修了。89年、ロッテルダム・クンストアカデミー大学院奨学生。92年メキシコ、94年ベルリンにて「Tales of Domestic Madness」、96年スロウ゛ェニア、99年西コークアートセンターにて「HOST」、01年ベルリンにて「A Year With Road Kill」など個展開催。99年、スロウ゛ェニアとアイルランドのアーティストによるリュックサックプロジェクトを開催。04年はフロリダのアーティストと開催。リュックサックプロジェクトの企画者でありキュレイター。05年、CAP HOUSEにて作品制作とレクチャーを行った。

今回展示する作品は「100 PACES(In Kobe)」。06年8月、コークのコリンズバラックにあるアイルランド防衛軍コマンドブリゲードトレーニングセンターの兵士たちと、合唱と行進をもとに、ダブリンの国立美術館のためのサウンドアートのプロジェクトをはじめた。この作品は、アイルランド・パブリックワークスによる国立美術館のパーセントフォーアートの委嘱事業であり、アイルランド防衛軍の正式な軍のドリルを取り込んでいる。
軍の音楽レパートリーをもとに作曲された現代合唱曲で兵士達がうたい、叫ぶこの作品は好評を博した。
完成した作品は07年2月24日にダブリンのコリンズバラック、国立美術館のクラークスクエアで一般公開のパフォーマンスとして上演された。このパフォーマンスの映像記録は美術館のコレクションとされ、美術館で上映されている。CAP HOUSEでは、この映像記録の上映を行う予定である。