2012年2月16日

2/11前田諒太郎 個展「色えんぴつ12色の世界」オープニングパーティー・レポート

今回も参加者の藤墳智史さんによるレポートです。いつもありがとうございます。 2月26日(日)まで開催中の前田諒太郎さん個展「色えんぴつ12色の世界」
今回は去る2月11日(土)に開催されたオープニングパーティーの模様についてお知らせします(藤墳智史)。
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前田さんは現在、兵庫県立特別支援学校高等部3年生。小学校5年生の時の紙芝居づくりがきっかけで、絵を描き始めたそうです。今回の個展では、高校出の3年間にわたって彼が製作してきた多くの作品が並べられました。パーティでは、前田さんと彼の担任の岡島先生と一緒に館内を回りながら、1つ1つの作品について製作のきっかけや過程、作品の見どころなどが作者自身から紹介されました。来場者にとっても、彼自身が3年間の間に様々な対象と出会い、1つ1つの作品に繊細で緻密な技術をもって製作にのぞんできたこと、そして作品が出来上る中で織りなされる周囲の人たちとのエピソードや、作品をめぐる彼自身の記憶や思いを伺い知る機会となったのではないでしょうか。
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今回の展示の流れになっていたのが、彼の高校3年間での「ステップアップ」だったと言えるでしょう。まず最初の1年はいくつかの展示に向けて沢山の作品を描きためていき、次の2年目には実際に展示へ出品することを続けていったそうです。そして3年目となる今回の展示。300点以上の作品が並ぶ、彼にとって集大成と言える展示となりました。もちろん、この3年間は彼にとって作品の数をためるだけの期間ではありませんでした。色鉛筆で描き出された美しい風景や質感を見れば、描きためるのとは別のステップアップを見てとることは決して難しいことではなかったはずです。
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彼の作品の多くは色鉛筆という比較的スタンダードな道具を使って描かれたもの。その色の数は12色だそうなのですが、彼はこの12色が、最も自分が作り出したい色を作りやすい色の数なのだと言います。彼が描く絵に見える美しい花々の色、動物たちの素肌の色、青空の色、夕焼けの色、新緑の色......etc、これらの色は彼が身をもって感じ取り、色鉛筆でもって彼が見た色として見るがわに伝えられた色です。見るがわには、花の色、動物の色、青空の色、夕焼けの色、新緑の色を大まかなイメージとして既に「知っている」かもしれません。でも、こんな風に見えることもある、感じることもあると伝えられることはあるでしょうか。既存にはない、名前が知られていないような色を、対象から絞り出すように細かく把握して、色の遷移や鮮やかさを誰にも見えるように描き出す緻密なタッチ。そうした美しい情景を際立たせてくれる大胆な構図。今回の個展は長い時間をかけて模索されてきた彼自身の製作のスタイルが確立した地点だったではないでしょうか。
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オープニングパーティーでは、前田さん自身から作品についての説明が行われましたが、製作した時期や状況、経緯、作品をめぐる彼の思い出が詳しく紹介され、作品をめぐる人との出会いや繋がりもまた、彼自身が製作を続けて行く中で重要なものだったことも見えてきたと思います。絵を通じたコミュニケーションを思わせるものも多くありました。彼の製作の出発点となった紙芝居、誕生カード、カレンダーや学校のポスター......etc。こうした様々なものを描いていく中で、これからは水彩やクレヨンなど、違う描き方にもチャレンジしたいと考えているそうです。
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自らの身体で感じ取ったものを、緻密な作業を通じて、ダイレクトに私たちに伝える前田さんの作品たち。知っているはずの物や風景から、今まで知らなかった綺麗な姿や美しさが殻を割って出てくるーー彼自身の思いが解き放たれた作品をこれからも見続けることができたら、そんなことを私は感じました。


【作家略歴】
前田諒太郎(まえだりょうたろう)
1993年兵庫県生まれ。
現在、兵庫県立特別支援学校高等部3年生。
小学校5年生の時の紙芝居づくりがきっかけで、絵を描き始める。
-受賞歴-
・ポコラート全国公募展 vol.2 入選
・平成22年度障害者雇用支援月間ポスター原画・絵画 高校・一般の部 入賞
・第2回あーと甲子園ー小さなピカソたちの夢 審査員賞
・障害者スポーツネット兵庫・障害者スポーツの日ポスター 兵庫県教育長賞

shimoda 01Y3日記
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