2012年6月20日

7月のcapture「ビブリオテーク208.ext〜移動美術資料室がCAPにやって来る!」今年度の開催に向けて。


1207_capture_th_bibliotheque208-2.jpgとにかく、やはり、中途半端であった――これが昨年度、10回の移動美術資料室を行った感想です。全体のテーマ間の関連も見えず、深まりもなく、驚きも感じず・・・。それでも10回皆勤の参加者もいらっしゃり、かえってこちらの方が恐縮する次第でした。

そうはいっても、得ることはありました。当初のうたい文句、つまり「美術資料を皆で見て、読み、話すことにより、学校の授業とも公開講座とも違う、いかにも美術らしい共同体験の場」が幾分なりとも実現していたからです。資料提供者である私の理解や知識をはるかに越えた、参加者からのコメントや情報提供、意見交換が相次ぎ、結果的に一種の知のワークショップが(常にではなかったですが)誕生していたように感じました。ある意味、主催の私自身が一番得をしたかもしれません。

そもそも美術資料室を設け、公開し、皆さんに利用していただこう、という大それたことを思い付いたのがつまずきの発端。資料の整理などひたすら苦行のようにすべきものですが、そんなことには最初から耐えられるはずがありません。結果として、「ビブリオテーク208」はますます混迷の度合いを増し、あろうことか、未だに購入などして増える一方なのです。既にして収納の場所もなくなり、適切でないたとえですが、「バベルの図書館」状態。それでも、移動資料室開催のお陰で資料整理やデータ化が少し出来たことは前進と考えています。

しばしば質問されますが、世の中の情報化の流れとは違って、何故書物という「もの」としての美術資料に固執するのか、と。置き場所に困るなら、スキャンしてデータとして保存すれば良いではないか・・・。確かに時流には乗ってないし、深遠な哲学に基づいているのでもありません。美術とは基本的に「もの」に依拠している、という原理論を振りかざすつもりはないのですが、少なくとも美術と「もの」とはきわめて親和性が高いのは間違いないと思います(「もの」と本とに話を戻せば、その点にアーティスト・ブックと呼ばれているものの存在理由が明らかとなるでしょう)。

要は私の個人的な趣味が、目標もないままに30年以上の年月を経て、現在のようになってしまった、というのが正直なところ。冒頭に記した中途半端さも、結局このことと原因・結果の関係にあるのでしょう。

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さて、今年度もCAPにお邪魔することになりました。昨年の反省に基づき、内容一新・魅力倍増と行きたいところですが、果たしてどうなることやら。

今年度の「目玉」は2つあります。その1つが、10月14日開催の「ビブリオテーク208 秘蔵資料大公開」。詳細は未定ですが、とにかく、「これは!」と思えるものを紹介したいと考えています(「たったこれだけ〜」とならないように頑張ります。「鉄分」も少し加えます・・・)。

もう1つが来年1月20日に行う、「この一冊!」。参加者各自に、これぞと思う自慢の秘匿資料を持ち寄っていただく、いわば、ブック・パーティ。その資料にまつわるお話もうかがいたく、皆様、今からご準備をお願いいたします。

最終回の2013年、3月10日には、「アーティストの仕事を理解する(2)」を予定。幅広い領域でパイオニア的な仕事を開拓してきた山口勝弘(1928年〜)の歩みを辿りつつ、仕事の全貌を明らかにしたいと、これまたかなり無謀な試みに挑戦します(「実験工房」に関するまとまった展観の開催に合わせています)。

どうか今年度の「ビブリオテーク208.ext〜移動美術資料室がCAPにやって来る!」、ご期待いただくとともに、有形無形のご協力をお願いする次第です。


森下明彦(ビブリオテーク208.ext主催 メディア・アーティスト、美術・音楽愛好家)
フリーで美術と映像に関する研究を続けながら、美術資料室(神戸市)の開設公開を準備中。
また、国立国際美術館客員研究員として「中之島映像劇場」という名称の映像上映会を企画。


【今後の予定】
7月8日    古書店のカタログ
8月19日    美術と電話 
9月9日     雑誌を改めて読み直す(3):アート系リトル・マガジン  
10月14日    「ビブリオテーク208」 秘蔵資料大公開  
11月11日    池長孟:神戸の大コレクター 
12月9日    リプリント/復刻版特集 

2013年
1月20日    この一冊! 
2月17日    DVD/VHS:蔵出し/虫干し
3月10日    アーティストの仕事を理解する(2):山口勝弘
→3月31日に日程変更しました。


facebook pageもあります。昨年度全10回分のテーマ一覧はこちら、C.A.P.のニュースレター、2011年「caper6月号」のピックアップ記事「Bibliotheque 208主宰、森下明彦インタビュー」はこちらです。
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