2013年12月13日

1月のCAPTURE:フランスの時間


木村さんは大学卒業後、丹波の窯元で働いていました。CAP STUDIO Y3のアトリエには2012年から参加していて、陶芸以外にも色々な表現で魅力的な作品を作っています。毎年のように生活が変化していたはずですが、昨年夏にもすてきな体験をしたようです。


kimura005.jpgフランスの時間
木村のぞみ(陶芸作家)

昨年夏に生まれて初めて日本を出て、フランスで滞在制作と展示をしました。パリからTGVに乗って西へ1、2時間向かったところにヴィトレ(Vitré)という街があります。ヴィトレ城を中心に古い木造の建物が立ち並び石畳にフラッグが吊るされた中世感漂う中心地、そこから壁外に出て葡萄のツタが茂る小径を抜けると川や森や修道院ファームと住宅地、そして別の街へ行く道があります。とても小じんまりとして美しい田舎町です。

kimura001.jpg中心地から外れたところに友人と一緒に貸し家を一棟借りて、二日に一度程のペースで開かれるマルシェで食料を買い込み自炊生活。貸し家の前に生っていたさくらんぼをジャムにしたり、いくつかあるパン屋さんのトラディションを食べ比べしたり、ブルターニュ地方だから乳製品食べようよヨーグルトおいしいよ!と買ったらフロマージュブランという亜種だったり、生きる基本で一番の楽しみでもある食の時点から冒険でした。とにかく期間が限られているといろいろ試したくなるもので常に次のご飯のことを考えていて1日にご飯が3回しかないことが悔やまれるくらいでした。

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kimura003.jpgヴィトレでは朝の空気が清々しくて、目覚めるたびに今日に歓迎されてるようで「生きてていいんだ...!」と目が冴えて飛び起き、寝間着のまま上着だけ羽織って陽の昇りはじめでまだ薄暗く霧がかった修道院ファーム裏の小径へ野ウサギや鹿を探しに散歩に行って、もう活動しだしてる家畜を見下ろし「ファームに出たり入ったりしてる野ウサギはたまに捕まえられて食べられるんだろうか。」などと考えながら帰宅し朝ご飯を食べて身支度をし、アトリエに向かった毎日。アトリエはヴィトレ城の近くで観光客がよく通る場所にあって、他にもいくつかのアトリエが同時期に展示をしていました。これらのアトリエはもともと空き店舗だったところを市がギャラリープロジェクトと題して始めた店舗再生計画に組み込んだものでした。友人は海外に紹介したい日本人作家の作品と日本の現状を紹介する展示をしました。私はトランクに入るだけ詰め込んできた陶製オブジェやうつわを並べ、公開制作として陶製家畜オブジェの1/1モデルを作ってみたいと思っていたので、街で廃棄されたダンボールや新聞紙を集めて張り子やペーパーマッシュの技法を用いた紙製家畜オブジェを作ることにしました。初めての地で何もかもが手探りでした。
kimura002.jpg最初の数日は現地の人も遠目から様子をうかがっていましたが毎日挨拶をして打ち解けてゆきました。声をかけられたりご飯に誘われたりするようになり、彼らの穏やかで陽気な気質に緊張もやわらぎ、現地の空気に馴染んでゆくような気分でした。お向かいの服屋さんは店前に引っ張りだしてきた椅子に腰掛け、ひなたぼっこをしながら道行く知り合いと会話をしたりお昼にはきっかり店を閉めて子どもと一緒にお昼休みに帰ったり、それで成り立っている。どこのお店も店員さんとお客さんが世間話をするのが常で急がないし、マルシェで楽器を演奏したり輪になって踊るのは特別なことではなく習慣で、生活の楽しみ方のレベルが成熟している。日本とは違う時間を何より大切にしているのだと思いました。これからどうしていくべきか考えている私には今回の公開制作はアーティストとしてだけではなく、人間としてたくさんのものを得られたとても良い経験になりました。

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木村のぞみ(陶芸作家)http://thuileri.web.fc2.com/
1987年、大阪生まれ。2012年よりCAP STUDIO Y3のアトリエアーティストとして参加。陶芸だけでなく布や紙をつかって作品を作ったりイラストを描いたり、またねんどクラブなどで講師も務めたりしています。

今年の予定:
3/15(土)・16(日)展示と作品販売「KAVCマルシェ」 会場:神戸アートビレッジセンター
4/29(火・祝)講座〜手作りの紙に記念日の星座を記録する 会場:なんばパークス
5/10(土)〜25(日)個展 会場:ギャラリーゆめ(三宮)
10/16(木)〜26(日)個展 会場:ギャラリー6C(苦楽園口)
10/30(木)〜11/9(日)個展 会場:デラ・パーチェ(神戸元町)

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