2004/9/23-26
トヨダヒトシ スライドショー/映像日記
-- スクリーンの上に現れる"像"は手を伸ばしても掴むことは出来ず、日々の失敗やよろこびのように、時間に押し流されて消えていく。 - - ニューヨーク在住の写真家、トヨダヒトシによるスライドショーをCAP HOUSE中庭で4夜連続上映します。トヨダ氏は、印画紙に定着した「モノ」としての写真ではなく、現実の世界と同様に、知覚したとたんにすり抜け記憶にしか残らない表現にこだわりつづけている写真家です。どの作品も焼き付けた写真は展示せず、1時間前後に及ぶスライドショーという方法で発表しています。また、すべて本人が手動でスライドを送ってゆくなど、スライドショーにおいてもその時、一度きりのライブ感覚をもって、映像を演奏するように操作しています。
今回は、天井のないCAP HOUSE中庭での上映です。昨年、CAP HOUSEを訪れ丹念にこの建物を歩いて、そこで彼が感じたいろいろなものと作品がこの9月に出会う事になりました。すべてサイレント作品ですので、その時聞こえてくる音、風、温度などの環境に作品をそっと置いてゆくような上映会になるでしょう。9月の夕闇と作品をゆっくりと味わっていただく機会になれば、と思います。
上映予定作品
[NA.ZUNA part 1]・[NA.ZUNA part 2]・[The Wind's Path]
23日(木・祝) 18:30〜「NA.ZUNA part 1」(55分),19:50〜「NA.ZUNA part 2」(65分)
24日(金) 18:30〜「The Wind's Path」(45分),19:40〜「NA.ZUNA part 1」(55分)
25日(土) 18:30〜「NA.ZUNA part 2」(65分),20:00〜「The Wind's Path」(45分)
26日(日) 18:30〜「NA.ZUNA part 1」(55分),19:50〜「NA.ZUNA part 2」(65分)
毎日18:00 オープン
アーティストトーク有り。トークは1日1回、オープン後に時間不定で行います。
参加費: 各日 1,000円(1ドリンク付)、2回目以降は1日 600円
※屋外での上映会です。雨天の場合中止する事がありますのでご了承ください。
■スライドショー/映像日記 a series of visual diary/slide show
アメリカへ来た当初は、中古のステーションワゴンを買ってあちらこちらへ出かけて行った。行き先はいつも決めなかった。移動している間だけが自分の居場所のようで救われていた。路上での孤独感と解放感、などというのが逃げるための言い訳でしかなく、旅先のよく知りもしない人々や、街の眺めを撮ることが身勝手な行為でしかないことを知るのに二年かかった。誰も、何事も、写真に撮られるために存在してはいない。写真を撮ることを止め、ニューヨークで自分の部屋とアルバイト先を往復していた。自分が何をしているのか、何がしたかったのか分からず窓からおもてを眺め続けていた。一年経ち、再び写真を撮ろうと決めた。
トヨダヒトシ
■トヨダヒトシ プロフィール
1994年よりNYで長・短編の映像日記 / 映像詩の発表を始める。
1999年までに"Silent Diary" part1−7他を上映。Fringe Festival (NY)、New York Downtown Art Festivalに出品。
1999年より日本での上映も始める。タカ・イシイ・ギャラリー、Nadiff、世田谷美術館、photographers’ gallery、graf gm他にて。 2004年は、ジョナス・メカス氏の主宰するAnthology Film Archives、Carosso Fine Arts(共にNY)、タカ・イシイ・ギャラリー、photographers’ gallery他にて上映予定。
■作品について
【映像日記 】
ブルックリンの住んでいたアパートからの眺め。迷い込んで来た猫との生活。降り続く雨。に、ただ打たれている庭の植物。川面の光。汚れた服でいっぱいになった青いランドリーバッグを抱え「見て。私、青空を抱えているよ」と笑う恋人。誰もいない地下鉄。繰り返し現れる夜の雪・・・静かに移り過ぎて行く季節と繊細に捉えられた私的な眺めが淡々とスクリーンに映し出される。
" NA.ZUNA" (2003-4/55分、65分/サイレント)
[ part 1 ]
9.11.01 / うろたえたNY / 11年振りの秋の東京へ / なつかしい道を何度も歩いた /
日本にもいるというアーミッシュの村を訪ねた / アフガニスタンへの空爆は続く /山奥の雪の閉ざされた寺へ/ 旅という名の野良犬 / 音もなく降る雪は、音のなさゆえ何かに似ていた /
[ part 2 ]
やがて来た春/眠るカタツムリ/言い訳もせず散ってゆく花 / 長くなる滞在/ 何でもない日常を見続ける / 二つの別れ /撮ったことと同じくらい、撮らなかったこと、撮れなかったことも大切に思う /見続けること / 今も / 戻れない時間 / 色 / この小さくてよく見えない星の上での出来事。
インド、バングラデッシュなどへの旅を終え八ヶ月ぶりに戻ってきた街、ニューヨーク。待っていた「見えなさ」。眺め続けた裏庭の眺め。降り続く雨、に、ただ打たれている花、虫たち。初めに言葉があった・・のか。いくつかの小さな旅をした。日々は続いていく。陽のあたるところの美しさ、陽のあたらないところの美しさ。