牧野慶治(大宮前郷土芸能保存会)
「はじめての獅子舞」
関東から離れた土地で東京の郷土芸能の講座を持つのは私にとって初めてのことでした。また、時間的にも限られていましたので、きちんと伝えられるのか心配でした。結果から言うと、大成功だったと思います。
第一の要因は、受講者の皆さんの強い目的意識だったと思います。エアコンがかかった部屋とは言え、普段はとらない姿勢を長時間続ける真夏の獅子舞実習は体力的にきついものです。いきおい集中が途切れてしまいがちになるのですが、最後まで集中し予定していた所作をちゃんと取得されました。皆さんの集中力には敬服いたします。
また、一人ひとりに細かい指導が出来たという意味において、受講者数が少なかったことが幸いしました。もしかするとこれも疲労の要因だったのでしょうか。初日の午前中は皆さん表情も豊かに歓談することもあったのですが、終る頃になると笑みは失せ寡黙になってしまいました。お察しいたします。
二日目の成果発表では全員がきちんと舞えましたので、私はとても嬉しく思いました。受講者の皆さん、本当にお疲れ様でした。
それにしても、C.A.P. HOUSEは面白いところです。ここにアトリエを持つバンスリ奏者の井上想さんの紹介で今回を含めて私は2度ここを訪れていますが、来る度に何やらわくわくしてしまいます。
通算で三日程度の滞在ですのでここの全てが分ったわけではもちろんありません。ただ、ここは何か面白そうな事が次から次へと起きそうな予感をさせる場所で、きっとここにいる人達が自分の専門分野を活かしながらダイナミックに互いに係わり合っているのだろうと思いました。基本的には皆さん独立した芸術家の方々なのですが、発散しているオーラが嫌でも絡んでしまうと言ったところでしょうか。
「アート林間学校」というのはそれをより範囲を広げた良い例なのでしょう。C.A.P. HOUSE内部の方や同じような芸術家の方々だけでなく、私のような趣味で郷土芸能をしている者や一般の方々を招き入れ接触の機会を作る。とても大胆でダイナミックな試みだと思います。多様な人達の接触によって必ず何かが誘発されます。それが新しい感覚や物の見方だったりして、次のステップへ踏み出すきっかけになります。
ダイナミズムを持つ集団と言うのは見るからに活気に満ちていて、見ているものをわくわくさせます。
コンピュータエンジニアである私の職場では、所属部門を横断して専門家を集め新たなテーマに向けて期間限定で実行部隊を編成したものをプロジェクトチームと呼んでいます。分野の違う技術屋が集まったチームに参加すると技術屋としてわくわくして腕が鳴ります。その結果、本人達も思いもしなかったようなアイディアが生まれプロジェクトを成功へ導いたりします。たまに悲惨な末路を辿る事もありますが。
産業と芸術は違うように見えますが、人同士のダイナミックな係わり合いとその相乗効果によって次へ進むというのは同じではないでしょうか。もちろん、個としてのテーマ追求というものが前提なのですが。私はそういう環境を作り出せる職場やコミュニティーに強く魅かれます。
こういうことがひょいと出来てしまうことがC.A.P. HOUSEの強みなのでしょう。
三度目に訪れるときは何が起こっているのか、楽しみで仕方ありません。