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●11:00〜20:00/火曜日休館 ●〒650-0003 神戸市中央区山本通3丁目19-8 ●caphouse@cap-kobe.com ●TEL,FAX 078-230-8707

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「CAP HOUSE便り」vol.5 井上 想

「301号室:井上 想です。」

今回登場してくれるのは、CAP HOUSE 301号室の井上 想くんです。とにかく彼は声が大きくて、その笑い声はCAP HOUSE館内に響き渡るほどです。キラキラした瞳と旺盛な好奇心を持つ人なつっこい彼に、なぜか懐かしさを覚えます。

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■CAP HOUSEの夏
「ニッポンの夏。キャップハウスの夏」…。昭和3年に建てられたというこの建物に空調設備が整っているはずもなく、館内では冬は冷蔵庫の中、真夏にはサウナに入った気分を味わうことができます。そのため、1年をキャップハウスで過ごせば、強じんな体と心を養うことができるのだと信じられています。
その夏の暑いキャップハウスがさらに熱くなる、恒例の「アート林間学校」が間もなく始まります。毎年この時期になると、子どもたちの感動と発見に満ちた歓声と、大きくなっても好奇心を忘れることのない大勢の大人たちの熱気によって、館内はムンムンとしています。その光景は本当に素晴らしく、まさにキャップハウスは、老いも若きもどこから来た人であろうと「何かを“思った”人たちが行き交う巨大な交差点である」と僕は常々思っています。

■行き着いた先はバンスリー
さて、その「僕」の自己紹介が後回しになってしまいましたが、301号室のアトリエをお借りしている井上 想と申します。ここへ通うようになって2年半がたとうとしている僕は、名もなき笛吹きであります。実はキャップハウスは美術に携わる人たちばかりではなく、音に携わる人たちも出入りするところだったのです。
さて、東京の町なかで生まれた僕は、近所の神社から夜な夜な聴こえるフエ・タイコの音色にただならぬ興味を覚え、幼いころよりこれを習いはじめました。ここでは神社の祭りに演奏される、俗に言う「祭りばやし」と呼ばれる音楽や、古代から五穀豊穣などを願い、神に向けて舞や音楽をささげる芸能である「神楽」を伝えていたのです。
いろいろなことを教わるうちに、僕の興味は横笛という楽器、その一点に絞られていきました。そして、20代の前半に世界中の横笛を求めて放浪し、最後にインドの「バンスリー」という竹の笛にぶち当たったのです。この笛の放つ甘い音色、海の底のように深い未知の響きに大きな衝撃を受け、日本に帰ってきました。しばらくして、神戸にそのバンスリーの演奏家がいらっしゃるという話を聞き、3年前にこの町に移ってきたのです。

■CAP HOUSEと僕
現在は、その日本のバンスリーの第一人者、中川博志先生(通称ヒロスさん)に教えを受けています。中川先生は、震災を機にさまざまな芸術家との交流を深め、99年にキャップハウスがスタートしたころには、その運営にも関わるようになっておられたのです。
僕が神戸に出てきたばかりのころは練習場所に困っていて、須磨の浜辺や山の展望台まで毎日出掛けて行かなくてはなりませんでした。それから1年ほどしてキャップハウスを紹介していただき、めでたく301号室にやってきたというわけです。最初は引きこもって練習に励み、終われば家に直行という日々でしたが、最近は違います。ここを行き交う人たちとたくさん話をします。
また、定期的に開かれる展覧会やコンサートの設営を手伝うことで、多くの人たちの考えも知ることができます。今となっては、ここは僕の学校であります。皆さん、どうか時間のあるときには、暑い熱い夏のキャップハウスへ遊びにいらしてください。そして、もし笛の音が聞こえたなら、ぜひ301号室にもお越しくださいますように。

 


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