2011年8月16日

8/26、27、28_9月4日コンサート;トルコ音楽の魅力

トルコ音楽の講義で講師を務め、またコンサートでは演奏も行なう、アポさんことアブドゥルラッハマン・ギュルベヤズさんにトルコ音楽の魅力について伺いました。

【トルコ音楽の魅力】
〜アブドゥルラッハマン・ギュルベヤズ(言語学・トルコ音楽)に聞く

2011/8/3 トルコ料理店ケナンにて
聞き手:下田展久(C.A.P.)、Hiros;中川博志(インド音楽、「世界音楽における即興」企画)
料理:タイフーンさん(トルコ料理の店ケナン)
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9月4日にいよいよトルコ音楽のコンサートが、またそれに先立って8月26日から3夜連続の講義が開催されます。
企画のHirosさんとともに、トルコ人音楽家のアポさんことアブドゥルラッハマン・ギュルベヤズさんにトルコ音楽の魅力について聞きました。
インタビューの場所は、アポさんの高校の同級生がやってる北野町のトルコ料理店ケナン。
トルコの音楽にエキゾチックな期待が高まります。


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■アポさんのこと
わたしは、地中海の東北部にあるイスケンデルという港町で生まれました。紀元前330年にアレクサンダー大王が作った町です。高校はイスタンブールの軍校で、友達がわたしの胸ポケットに入れた紙切れがもとで、反政府的という理由で半年間牢に入れられてしまいました。その高校で同級生だったのがこのレストランのご主人です。そのあとドイツでドイツ語の教師をしているときに日本人の女性と知り合って、2004年から日本に住んでます。神戸に来て食事をしてたら、フルネームでわたしを呼ぶ人がいてそれがこのご主人。びっくりしました。今は阪大でトルコ語を教えていて、専門は言語学とトルコ音楽です。


■トルコの音楽って?
トルコ共和国は第一次世界大戦後にオスマン帝国が解体されてアナトリア半島にできたトルコ民族の国です。オスマン時代というのがその前に600年ほどありました。さらにそれ以前のことを言えば現在のイラクにあるバグダードが世界の音楽文化の首都だったのです。当時はイスラム文化が北アフリカから中国辺りまで広がっていました。音楽が最も盛んだったアッバース朝(750〜1258)時代に現在のトルコの古典音楽の基礎が完成されたのですが、北アフリカから地中海、黒海、さらに西アジア、インド、モンゴルあたりまでの色々な音楽がバグダードの宮廷に集められていたので、様々な地域の音楽とつながっているのです。
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■トルコではどんな音楽が人気なの?
20世紀には日本と同様に西洋の音楽が入ってきましたが、トルコではあまり受け入れられず、今でも基本的には多くの人が民謡や古典を好んで聴いています。西洋音楽は伝統音楽にあまり影響を与えなかったようですね。現在、トルコ音楽といえば、歌を中心にした民謡が人気ですし、アカデミックなオスマン時代からの古典音楽では器楽曲が音楽ホールでよく演奏されます。

■アポさんはどんな音楽がすきなのですか?
スーフィーの人たちの音楽(宗教音楽)が好きです。イランの伝統的な音楽に変拍子の早い曲がたくさんあって、ダルブッカなどのゴブレットドラムがよく使われます。そういうのが好きですね。


■マカームって?
専門的になりますが5〜6個のテトラコルドを組み合わせて作る音階型で600種類くらいあり、よく使われるものだけでも150はあります。インド音楽でいうとラーガのような概念です。さらに音高については1オクターブを24に分割する方法と17、あるいは18に分割する方法があり使い分けています。1920年頃に政府が西洋の記譜法で民謡を採取させたことがあり、大変問題になりました。西洋音楽では1オクターブは12分割しかありませんからね。それから、器楽の即興はマカームに基づいて行いますが、一つのマカームでも音域によってテトラコルドを渡っていくことになるでしょ?そのテトラコルド毎の特徴的な旋律とかフレーズがあって、演奏家はその味を引き出さなくてはいけません。

■今回トルコから来る音楽家は?
カーヌーン奏者のトゥランとは何度も一緒に演奏していますが、演奏も知識もすごい人です。一曲のなかでマカームが切り替わる場所があり、演奏し、歌いながら微分音程の再調律をします。
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ある時二人でラジオの生演奏をしていました。すごく早い即興で、彼はカーヌーンと歌、わたしは打楽器を演奏していました。
演奏中に彼はわたしの癖をつかみ、最後にバシッと終わる時にわたしがもう一拍打ってしまいそうになったのを右手で止めたんです。びっくりしました。今回も一緒に演奏するのがたのしみです。
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それからネイの演奏家のトルガもすごいですよ。良いネイの演奏家は少ないんですが、彼の演奏が聴けるなんて今回のコンサートに来た人はラッキーだと思います。


■おすすめの曲
わたしの好きな曲ばっかり選んでしまいました。スーフィーの曲で「トカト・セマッフ」というのが急に5拍子になったりして音楽的な構造も面白い。また黒海地方のクルド語の歌など、やはり大変面白いリズムです。尺八の石川さんとHirosさんも一緒に演奏する「鶴のセマッフ」も大好きな曲です。メロディーも複合的でリズムも4拍子と9拍子の組み合わせです。また今回選んだ古典曲は、これぞ古典!という渋いやつです。このコンサート、どうぞゆっくり堪能してください。

世界音楽における即興 シリーズその2「トルコ音楽」3夜連続講義とコンサート

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