2013年4月29日

4/13ドイツよりお帰りなさい☆

13(土)倉智久美子カフェトーク「ドイツと私」
               18:00〜
               話者:倉智久美子(アーティスト)、聞手:加藤瑞穂 (大阪大学総合博物館招へい準教授)
               参加費:無料(要1ドリンクオーダー)

以 前C.A.P.のアトリエアーティストだった倉智久美子さん、大阪のサイギャラリーでの個展で一時帰国の予定ですが、現在はデュッセルドルフで活躍中で す。渡独の動機とドイツでの仕事、そしてコンクリートクンスト、ミースファンデルローエハウスなど彼女が仕事の核に置いているもの、奥深いドイツの美術に 対する発見やクンストアカデミーの教育などについてお話ししていただきます。
*倉智久美子URL www.Kumiko-Kurachi.com





今日のトークでは現在サイギャラリーでの個展と、かつて自宅で行なった展示の試み
(8週間、毎週展示の仕方を変えながら公開した)についての内容が主なテーマになりました。



そして、渡独の動機についてー。
80年代末にニューヨークで見たImi Knobel(イミ・クネーベル)Blinky Parermono(ブリンキー・パレルモ)の作品に、
アメリカのミニマルアート(装飾的・説明的な部分をできるだけ削ぎ落とし、シンプルな形と色を使用して表現する彫刻や絵画)
にはないものを感じ感銘を受け渡独しました、と、倉智さん。



ヨーロッパにはKonkret(=具体) Kunst(=アート/芸術)というものがあります。
ミニマルはひとつの様式ですから、時代とともに古びて行くのですが
コンクリートはひとつの概念ですから古びることはありません。
オランダのTheo van Doesburg, スイスのMax Bill等がその先達でしょう。
モダ二ズム(近代主義)の基盤のうえに見えないものを形にするということのため
今なお決して主流にはならないのですが、れっきとした存在感を持って発展し続けています。



コンクリートの意味は、そのまま直訳すれば具体という意味になりますが、
それは形のないものに具体的な形を与えるということでしょうかー。
コンクリートを主として展覧会を催している場も多くあり、私が発表しているのもそんな場所です。
コンクリートポエジー、コンクリ−トミュージックなどもあります。



ベルリンでの展覧会は、ちょっと特別な場所だったんですよね、と、加藤さん。
そう。ミースがドイツ時代に最後に建てた私邸が東西統一後小さな美術館になっています。
ミースの意を汲んで、2002年?ごろ、Max Billの展覧会でオープンしています。
小ちんまりしていますが庭との調和もすばらしく、「自然と建築の調和」ということで
いまでは建物と庭も区域の文化財になっています。ベルリンにはおそらく唯一のしっかりした
コンクリ−トの場ですね。
ここでも窓のインスタレーションを設置しました。
まあ、いってしまえば存在とイリュージョンなんですが、それを想起させるひとつの図像です。
(ウイトゲンシュタインの、ウサギアヒルのようなものですねー。)



 するどい加藤さんは、倉智さんの作品を見て、空間を問題にしていると見抜きました。



Q.倉智さんは作品の写真を自分で撮りますか?
いや、わたしって、粋がってしまうので、お願いしたらまかせるよってタイプなんです。
でも、しまったって思うことありますね~ 笑



Q.アカデミーでは、どんな教授のもとで勉強しましたか?
最初に受け入れて下さったChristian Megertは、グループ Zero の一員でした。
その方がゼミでコンクリートのことを話されたのです。
ラッキーでした。それから理論家のGerhard Merz, 実作としてはDavit Rabinowitch、
私には3人の教授がいました。そう、日本と違うところは何人の教授からサインをもらってもいいのです。
特にMerzのクラスでは、ここで理論を学び、他の教授のもとで作品をつくる、という学生が多くいました。
私は当時ドイツ語ができなかったので、通訳を連れてMerzのゼミに行っていました。
Merzクラスは、金髪青い目のドイツ人美男子(笑)学生が多くを占め、アジア人で若くもない女は
たったひとり。学生の中にはいつもぴしっとワイシャツを着ているのが多く、他のクラスと雰囲気は
かなり違っていましたね~。



そして、ドイツに戻られた倉智さんよりメッセージが届きました。
2013.4.23
CAPの皆様

先週末にドイツに戻りました。
オーバーハウゼンで5月5日から始まる展覧会、そして学校も明日からと、目まぐるしいドイツの日常が戻っています。
こちらの春は光が鮮やかで紫外線も強く、力強い春の花が咲き誇っています。この春の色彩は日本の春と大いに違います。印象派の色や、ゲーテの色彩論、なるほどなあ、と毎年感心する季節です。

先だってのトーク、多くの皆さんに来ていただきありがとうございました。
あの時に、私のCAP時代の話もしようとしていたのですが、話しがその方向にゆかず、また、ドイツの仕事中心に、という加藤さんの意向があったため、話し洩れてしまったのですがお伝えしたくメールしています。わたしは1999年11月、大掃除でスタートしたCAPハウスにそれから半年間仲間として入れていただきました。その頃はラフで、音楽やダンスの方も出入りして、広いスペースで自由練習などなさっていました。
わたしはそこで現在の窓の作品の原型ともいえるロープを使ったインスタレーションなどを試みていましたが、ある日ダンサーの方が勝手に私の部屋に入って(倉智さんの部屋に入ったら、ここで踊ってみたくなった、と言って)踊っているではありませんか!! 即興でしたがモダンダンス(ダンスパフォーマンス)は素晴らしく、5月のオープンハウスの際には時間を決めて踊っていただきました。

当時のCAPには、何が生まれるか分からないラフな、熟練した大人の表現者でさえ何かもう一度型を砕いて何のためでもない試行錯誤ができるような、そしてそこにそれを汲み取る力のある観客がたむろしているような場であったと思います。芸術というものは何のためにもならないことがその基本であると同時に、いつも何かとクロスオーバーして何かが生まれる。私には懐かしく、あの半年間は忘れられないよい思い出です。いつも、アットホームだしね!!

あの頃の良さを失わず、CAPがますます発展して行くことをお祈りしています。
ドイツ、ヨーロッパ方面にお越しの折りにはお知らせくださいね。

倉智久美子
鳴海健二 01カフェ日記
コメントしてください