2009年04月22日

5/23伝統は新しい! 〜私たちの音楽システムを考えるシリーズ 「インド音楽のレンズを通して見えてくるアジア的音楽の可能性」

5月23日から隔月ではじまるレクチャー&コンサートのシリーズです。
ぜひご参加下さい。
一回目の企画案内はこちらです。

fue1.jpg これは篠笛の楽譜。

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これはインド音楽のラーガの楽譜。

伝統は新しい! 〜私たちの音楽システムを考えるシリーズ
「インド音楽のレンズを通して見えてくるアジア的音楽の可能性」

【企画趣旨】
 われわれのまわりには西洋のハーモニー(和音)を基本としたパッケージ化した消費音楽があふれている。コードの組み合わせから簡単な曲を作るテレビ番組もある。しかし、そうした「普通」のやり方とは違った音楽を創造するシステムは世界中にある。とくにインドの音楽は、コードをまったく使わずにいかに変化に富んだ即興的メロディーを作り出すか、という考え方に基づいて緻密なシステムを作り上げ、豊かな音楽文化を誇ってきた。このインドの音楽システムは、日本や他のアジアの音楽の理解や、西洋のやり方とは違った音楽の創造に非常に有効なのではないか。シリーズでは、こうしたインドの音楽システムに基づく即興音楽のあり方の理解と、アジアを中心とした音楽を演奏する優れた音楽家をゲストに迎えてオルタナティブな音楽の可能性を提案していくことを目的としている。

【内容とこれからの予定】
このシリーズは、一回ではできないことに挑戦するために隔月開催を目指します。ホスト役はインド音楽の演奏と研究の第一人者、Hirosこと中川博志氏。毎回、非西欧の音楽を実践する音楽家をゲストに招き、その演奏を鑑賞するだけでなく、ゲストが専門とする音楽とインド音楽との比較によってアジア的な音楽の可能性を考える試み。即興を根本とするインド音楽の歴史は古く、体系は膨大で緻密である。長い歴史の中で他の音楽に与えた影響も少なからずあるため、様々な音楽となんらかの共通点が見いだされる。美学、演奏、楽器構造、音律やリズムの概念、また作曲の方法などの具体的な話題から、私たちが近代教育の中で失ってしまった「自分たちの音楽」を考えるヒントが見つかるかもしれない。音楽の話し、民俗の話し、演奏家の苦労話等、演奏とトークで約2時間、みなさんに楽しんでいただきたい。

第一回 5月23日(土)
「日本の笛とインドの笛」ゲスト:森美和子(篠笛)
篠笛の曲とラーガの関係、演奏法の違い、時間や季節と音楽など。
第二回 7月18日(土)
「インドネシア・バリの笛、スリンとインドの笛」ゲスト:小林江美(バリ音楽)
スリンとバーンスリーを聞く。バリ島の音楽とインドの音楽。
第三回 9月19日(土)「聲明とインドの音楽」ゲスト:浄土宗聲明グループ「七聲会」
   聲明を聴き、そのメロディーの作られ方等を伺う、等。
第四回 11月21日(土)
「自然倍音によるホーミーとインドの音階」ゲスト:岡林立哉(ホーミー演奏家)
倍音と音律について、ホーミーを聴き、インド音楽の音律を聴く。

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第一回「日本の笛とインドの笛」
 笛は日本の伝統音楽において重要な役割をになっている。祭りの音楽では太鼓と並んで欠かせない楽器だし、能、歌舞伎、雅楽、神楽は笛なしには成り立たない。
 能や狂言で使われる能管は旋律的にはどうしても聞こえない。あれは吹く打楽器だという人もいる。いっぽう、篠笛は美しく情緒的な旋律を紡ぐ。同じ日本の横笛なのにまったく印象が違う。発音したり旋律を演奏したりするには何か決まりがあるはずだが、実際にやっているもの以外にはなかなかわからない。
 インドの笛、バーンスリーは、楽器の構造としては日本の横笛とそう変わりはない。しかし、バーンスリーに限らずインドの楽器は声による音楽の模倣を基本としているので、能管のようないわば効果音のような使われ方はしない。あくまで旋律を演奏する楽器である。
 同じ笛でも日本とインドでは音楽のあり方が違っているので表現方法も違っている。違いと共通点を探っているうち、いきなりセッションなんてことになったら新しい出会いになるかもしれない。

【プロフィール】
ゲスト 森美和子(篠笛・能管)
日本の竹笛(篠笛)の奏法を研究し、創作・演奏活動を行っている。ソロで演奏する他、太鼓、琵琶、チェロなどの演奏家や歌手とユニットを組んで公演。'03年に他ジャンルの芸術家と共に「澄瑠璃(とるり)」発足、企画公演を毎年開催。能楽の笛を一噌幸弘氏に師事。 京都、大阪で篠笛教室を開催。
 京都市立芸術大学美術学部在学中から「場」を作ることに興味を持ち、自分と外界や他人との関係をテーマに作品を模索。卒業後、篠笛の音を初めて生で聴いた瞬間に血が逆流したかのような感動を覚え、笛の演奏を始める。それに伴って、日本各地の伝統文化に目を向けるようになった。
 1997年より2年ごとに、八丈島から奥山熊雄氏を京都、大阪に招き、八丈島の伝統芸能のワークショップとコンサートを開催したり、岩手県北上市岩崎の伝統芸能「岩崎鬼剣舞」の踊り組の弟子として関西で活動する「岩崎伝・京都鬼剣舞」で囃子の笛を担当するなど、出会った芸能を関西に紹介する活動も行う。また、京都府下の祭りで途絶えかけている笛の旋律の採譜などを行っている。
 能楽の笛を一噌流笛方・一噌幸弘氏に、謡を観世流・梅田邦久氏に師事。奄美民謡を上村藤枝氏に師事。京都、大阪で篠笛教室を開催。

Hiros;中川博志(バーンスリー)
1950年、山形県生れ。1981年〜1984年インドのベナレス・ヒンドゥー大学音楽学部楽理科に留学、インド音楽理論を研究。大学のかたわら、バーンスリー(横笛)、ヴォーカルを習う。現在、インドのパドマ・ブーシャン(蓮花賞、人間国宝)受賞者、パンディット・ハリプラサード・チャウラースィヤー氏にバーンスリーを師事している。帰国後、演奏会の企画制作、インド音楽理論書の翻訳出版などを通してアジア各国及び日本のパフォーミングアーツ紹介の活動を続けている。訳書「インド音楽序説」は日本語で出版されている唯一のインド音楽理論書。

田中りこ(タブラー)
1989年インド各地を旅行中にインド古典音楽の演奏に触れ、とりわけ打楽器タブラーの豊かな音色と表現力に魅せられ、学び始める。1995年再びインドのカルカッタに渡り、タブラー演奏家オビジット・ベナルジー氏に師事。現在は関西を拠点に、ホールや社寺など各地でインド音楽を中心とした演奏活動を行っている。そのほかテレビ・ラジオ出演、海外での公演、他ジャンルのCD作品に参加など、様々な活動を行っている。

シモダ  館長日誌
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