2011年2月 8日

2/5(土)Paul Venet展と山田麻美展、オープニング

2月5日(土)の夕方、Paule Venet "Leaving by Chance" 山田麻美「window」のオープニングが開催されました。それぞれ全く違う二人のアーティストの話しを聴きました。
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まずはPaul Venet(ポール・ベネ)さんのプレゼンテーションです。
彼はアメリカ人で、英語でのプレゼンテーションでした。通訳は不肖わたくし、シモダが務めました。
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このスライドは「ハドソンリバー派」という1800年代のアメリカの絵画様式の作品です。
ニューヨーク州を流れるハドソン川の奥、渓谷や滝など雄大な自然を描いた物が多いのですが、ポールさんが気になっていたのは、この光線です。
大気中の水分が非常に多いこのエリアでは、特に朝焼け、夕焼けの時、太陽の光りは鮮烈な色彩を生み出します。
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一方1600年代のフランス、デカルトは二重の虹が見えるのは、大気中の水滴の中で太陽光がこのスライドのように、散乱しねじれて二組のスペクトルとなっていくはずだ、と考えました。
このデカルトの分析は実は間違っていたのですが、ポールさんはこの光線の有り様に、興味をひかれました。
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今回の展覧で展示しているポールさんの作品です。
バンコクの町を走るバスの窓から露出時間を長めに設定して撮影した写真です。偶然に任せ、約600枚の写真を撮影し、そこからピックアップして展示したそうです。
そして面白いのは、露光を長くとったことと、これらの写真のフォーカスがバスの窓の表面に合わせて撮影されたということです。
移動するバスの窓の外側に、外の景色から光線が射し込み、散乱、屈折、反射などして、露光時間に応じた光りの総量が窓の内側に現れたものを撮影しています。
ポールさんの作品は、読書や会話から生まれたアイデアを再編集する方法と、もう一つは今見ているものはいったいなんなのか、ということを考える事から生まれる場合があるそうです。
今回の展示は、両者が渾然一体となって生まれて来たようですね。
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ポールさんの話しが終わって、展覧会場の4階に移動です。
「window」というコンセプチュアルな展覧を行なった山田麻美さんが作品のコンセプトを話してくれました。
山田さんは、身体の小さな人ですが、話す内容はガツンと骨太でした。
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彼女の展覧は、4階の階段を上がってすぐの広場と西側のギャラリー#1を使っています。
今回は時計がモチーフになっている物が多く、時間というものの捉え方についての面白い考察となっています。
この写真で彼女が見せているのは冷凍庫に入って凍って固まってしまった目覚まし時計です。
時計内部のメカニズムは動いているのが聴こえるそうですが、冷凍庫の中では針は固まって動きません。眼と耳と、時間の制動に関してのギャップが生まれます。
手前の机の上に見えているのは、ラジオ3台と時計を使った作品です。
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ラジオどうしの干渉で発振音が聴こえるのですが、すぐそばの時計の秒針の動きがこの電波環境に更に干渉し、聴こえている周波数が変化します。
正確な時を知らせるための電波時計が使われる世の中になりましたが、眼には見えませんが我々を取り巻く空間にもこの時をしらせる電波が満ちていることを、思い起こします。
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ギャラリーに移動です。
山田さんが指差しているのは、目覚まし時計をスキャナーで読み取った画像です。
スキャニングの時間を、読み取られた時計の秒針のブレが現しています。
手前は鏡と時計を素材にした別の作品。
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最後に時計ではないものも紹介します。
向合って接触した状態のふたつの体温計ですが、体温計が体温計の体温を計っている図です。
二つの個別の物体が、エントロピーの法則によって、温度という視点から見ると一つのものに同化している、という作品だそうです。
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ポールさんのLeaving by chance展示風景。
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そして、ふたり合同のパーティーはポールさんの奥さん、なつさんが大活躍で、アメリカンなメニューです。人気はピーナツバターサンドイッチでありました。
もうこういう時に思いっきりアメリカンにしちゃおうかしら、、、ということで。
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ああ、でも気をつけないとエルビスみたいになっちゃうそうです。
二人の展覧は、3月6日まで。
朝10時から夜7時までで、休館日は月曜です。ぜひご覧下さい。
shimoda 01Y3日記
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