2012年5月19日

5月12日(土)淺野夕紀個展「幽し(かそけし)」・井階麻未個展「百花繚乱(ひゃっかりょうらん)」、合同オープニングパーティー

5/12(土)~6/3(日)まで、4階ギャラリーにて、 淺野夕紀さん個展「幽し」、井階麻未さん個展「百花繚乱」が、同時開催されています。去る5月12日の個展初日には、CAPスタッフの小野さんをコーディネーターに迎えて、合同オープニングパーティー&アーティストトークが行われました。その模様をお伝えします(藤墳智史)。

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生命力と死──井階さん
 3月に京都三条のギャラリースペース「ARTZONE」で行われていた井階さんの個展「ひみつ」。その記憶がまだフレッシュな中でやってきた今回の個展「百花繚乱」。CAPでの「百花繚乱」も「ひみつ」からの勢いとパワーを感じさせる展示となりました。花が咲き乱れる美しさや鮮やかさ、そしてそこから感じられる生命力を描き出したかったという井階さん。一方で、生命力の反対にありつつも切り離せない「死」もまた同時に描き出したかったのだと言います。鮮やかな色が咲き乱れ、まるで描かれた花が生きているようにうねり動く中から這い上がってくる黒い波、あるいは花の間に隠れ住む不気味な蜘蛛。そうした様々なモチーフを織り交ぜながら、生死が入り乱れる様をパワフルに描ききる、そのように井階さんの作品を形容できるかもしれません。特に。東側ギャラリーの床に広げられた巨大な作品には圧倒された方が多かったのではないでしょうか。

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消えゆく色、薄れゆく記憶を描く――淺野さん
 井階さんとは対照的に繊細さ、緻密に考え抜かれたコンセプトが印象的な淺野さん作品たち。今回の「幽し」では、色や光、音が消えていく様子、あるいは記憶が薄れていくという営為じたいを描きだすと同時に、人の身体に消えゆくものが幽かに刻み込まれていることも、描くなかで明らかにしたかったと言います。「幽し(かそけし)」とは、何かが徐々に、ぼやっと消え去っていく様を指す言葉なのだとか。平面だけでなく、様々な素材を通じて、消えるか/消えないか、幽かな色や光、音を可能な限り顕わにしていくということが、淺野さんの作品では試みられていたように思います。写真や映像で映し出すのは難しいですが、間近に立って見てみると、幽かさが持つ美しさ、じわじわと画面に浮かび上がる鮮やかさを感じることができるのではないでしょうか。


それぞれ異なるテーマが重なる面白さ
 今回の2つの個展は、当初は別々の個展でしたが、偶然同じ時期に開催されることになり、お2人共同で何かをやってみようということになったのだとか。2人だからできること、ここでしかできないことをやろうと意気投合したそうで、一緒に企画を進めていく中で、お互いに真逆に見える作品に共通点を見出したり、一緒に展示をしてどんな効果が出るのかを考えたりもしたそうです。どんどん描き上げていく井階さん、少しずつ緻密に描いていく淺野さん──アプローチは違うけれども、でき上がるものは似ている、そんな感じがお互いするようにもなったのだとか。実際に、今回の2つの個展はお互いが補完しあうような、よく考えられた内容になっているのではないでしょうか。
 一方で、お2人の異なる点、特徴もそれぞれ今回は意識されたといいます。淺野さんは井階さんの作品を見て、自分の作品は沢山の人に向けて見せられるだろうか、と感じられたそうで、井階さんも淺野さんの作品を見て、しっかりとしたコンセプトを持っているので一発勝負型の自分の作品は食われてしまうのではないかと不安を感じられたそうです。ダイナミックな井階さんの作品、まんべんなく作りこまれた淺野さんの作品、それぞれが補完し合って今回の個展の面白さができ上がっているゆえの、お互いの「ライバル心」というところでしょうか。
 個展に向けて描くのが楽しかったという井階さん。今まで色を組み合わせて鮮やかな作品を描いてきた中で、今回の淺野さんの作品の繊細さ、細かいグラデーションには良い刺激を受けられたといいます。一方で、淺野さんも自分の作品はおとなしくなりがちな中で、井階さんのような作品を描きたいと思うこともあったのだとか。全く違うタイプの作品を制作してきたお2人による共同の個展、それぞれのこれからのチャレンジへの意気込みをうかがうこともできた、そんなオープニングだったように思います。



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*個展についてのご案内

淺野夕紀 個展「幽し」
井階麻未 個展「百花繚乱」
2012年5月12日(土)〜6月3日(日) 10:00〜19:00/月曜休館 

淺野夕紀は「光と影」をテーマに、色鉛筆や水彩、糸等を使って、日常の記憶や思い出が薄れていく様を繊細な絵画やインスタレーションで表現します。
一方、井階麻未は「生と死」をテーマに、今という瞬間を生命力溢れる鮮やかな色彩やタッチで、幻想的かつエネルギッシュに絵画を描きます。
対象的な性質の二人の作家が同時に個展を開催することで、また別の一つの世界観を表現します。今回しか見ることのできない、淺野と井階の創りあげるワンダーランドに是非、お立ち寄りください。

kono 01Y3日記
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