2012年7月14日

8月のcapture「C.A.P. の公開アトリエ」


CAP STUDIO Y3のアトリエでは現在10名のアーティストが活動しています。本人がいてもいなくても常にドアは開いたまま、誰でも覗くことができます。このアトリエ、実は貸しアトリエではありません。市立の施設になるずっと前から続けているC.A.P.の公開アトリエプロジェクトについてお話します。

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■もうひとつのコミュニケーション。
1994年、C.A.P.は神戸市が計画していた美術館の構想にアーティストとしての期待を込め、ある提案を行いました。既に価値が認められた作品を展示するよりも今ここで生まれようとしている美術のため、またアーティストの今の活動をめぐって市民が関わり、アーティストと共にシーンを育てることになる、そんな「今」のコミュニケーションが介在する美術館の提案でした。翌年の震災でこの計画は無くなりましたが、C.A.P.のなかでは、引き続き自分たちと社会をどのように繋ぐか、という話しが続いていました。やがてC.A.P.は自分たちができることから、手探りでこのアイデアを実践するようになりました。

■ちょっと大きな実験。
1999年、廃屋のようなビルだった現在の海外移住と文化の交流センターの建物で「CAP HOUSE〜190日間の芸術的実験」を実施。自分たちでアトリエやカフェ、図書コーナーなどを設置して玄関のドアを開け、出会った市民との会話からアイデアが生まれ、展覧会や講座、ダンスや音楽の公演を行いました。美術館のようなニュートラルな空間を確保することは不可能ですが趣のある階段、廊下の光と影など、建物も自分たちの材料として、CAP HOUSEというなにかをみんなで作ってゆきました。しかしCAP HOUSEの一番の特徴は「そこで仕事をするアーティストと会える場」である、ということでした。

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■ 参加アーティストにとっての魅力と海外から見た魅力。
Y3では、アーティストはC.A.P.全体の事業にも力と能力を発揮しなければなりません。大変なわけですが、何故彼らは参加しているのでしょうか。
「C.A.P.では、今でも創設時のメンバーや新しく入ったアーティストがコミュニケーションをとってイベントを作っていく。僕は一緒にいる人たちと新しいことをするのが好きなので、この環境はとても刺激的です。」と、昨年の6月からアトリエアーティストになった田岡和也さんは言っています。アーティストどうしの日常的な会話や、事業を一緒にすることを通して、互いに刺激を得て触発し合えること、そして何でも相談できる環境だということが魅力のようです。
一方、遠くからはどのように見えるのでしょうか。アトリエの一室はいつも空けてあって、時々短期で海外のアーティストが入って来ます。こちらには予算はないのですが、彼らはたいてい自国の助成を得てやって来ます。彼らにとってなにが魅力かといえば、ここには地域のアーティストのネットワークがあり、自分も同様に公開アトリエに参加する一員になる、ということに他なりません。つまり現地のアートシーンと直接つながることが、遠くからみた大きな魅力だと思います。

■ アーティスト支援やサービスではなく。
今は、市の施設ということもあり、安価でアトリエを提供する支援事業をやっていると思われがちですが、じつはそうではありません。美術館は作品を鑑賞する場所、学校は美術や音楽を学習するところ、そしてSTUDIO Y3は、美術を自分の仕事としている人達と出会う場所なのです。様々なタイプのアーティストが活動を公開し、訪れた人との交流からなにかが生まれアートのコミュニティーが育ってゆく、そんなことを期待して、C.A.P.からひとりひとりのアーティストに依頼し、この公開アトリエプロジェクトは行われています。

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