2012年11月18日

12月のCAPTURE「塚脇淳、ロシアの大地に彫刻を立てる」


鉄の彫刻家、塚脇淳さんがペンザ国際彫刻シンポジウムに参加してきました。ロシアで開催された彫刻シンポジウムの魅力とは?カフェでの報告会に先立ってお話を伺いました。



■彫刻シンポジウムについて
彫刻家カール・プラントルの呼びかけにより、1959年オーストリアのサンクト・マルガレーテンで彫刻シンポジウムが開催されました。古い石切り場に彫刻家が集まり、寝食を共にしながら制作し交流したそうです。
「商業主義は長い間芸術家を毒してきた。美術館、画廊、ビエンナーレは、もはや限界にきている。若い人たちの溢れる力を引き出すのに何の役にも立たないだろう。才能ある人間を発掘するために、創造的な仕事の場所を与えなければならない。作品は、時間と空間を共有しなければならない。そして、その場に根をはり、生き続けなければならない。」プラントルの考え方はその後、彫刻家を通して多くの国に伝播し、1970〜90年代には多くのシンポジウムが開催されるようになりました。

■ペンザ国際彫刻シンポジウム
ロシアのペンザ国際彫刻シンポジウムは、二人の彫刻家がホテルオーナーのスポンサーシップを得て、彫刻シンポジウムの考えを援用し野外彫刻公園を整備しようというものです。参加作家は国際公募で集まり、既に5回の開催を重ねて200点以上のコレクションとなっています。
彫刻シンポジウムの魅力は、制作のプロセスの公開、作家の交流、組織する人間の協力、市民との交流です。これはC.A.P.の精神にもつながりますね。それから作家としては普通、屋外で大きな作品を作ろうとすると様々な条件があって、実現するには課題だらけになることが多い。わたしは2度目の参加になりますが、ここでは作りたいものを実現できる。もちろんプランを提案し、それが彼らに認められて選ばれなければならないけれど。アーティストにとってはそれが大きな魅力です。また一方では、日本と異なる制作道具の違いや不備、価値観、生活習慣の違いなどの困難も体験する事になるのでそれを楽しまないとやってられないけどね。



■ロシアと芸術
ロシアは、再現性のない無対象の美術を生んだ国です。タトリン、マレービッチ、カンディンスキーといったロシア構成主義の作家が有名ですが、日本でも山口長男、斎藤義重などその流れを汲む作家は多い。不肖、私めも末席を汚しているかも。ペレストロイカ以降、ロシア構成主義の再評価が進みつつあり、自分としてはそういったところでなんかできないかという思いを持ちながら付き合っているのですが、長かったソビエト時代の影響は大きく、今やロシアの彫刻のほとんどが具象なのです。今回のシンポジウムでも具象の持つ力はすごいな〜という現実にさらされたなあ。でもね、抽象なんです芸術は!
世界中に滞在制作のプログラムがあるし、こういうシンポジウムもあります。ちなみにペンザ国際彫刻シンポジウムは、滞在費、材料費は主催者持ちで作家への謝礼は交通費込みの2,000ユーロでした。絵画での参加も昨年から始まっています。1カ月で20枚のノルマがありますが、ロシアのだだ広い大地を経験するのもいいですよ。
12月14日に、Y3のカフェで報告会を行います。興味のある方はぜひ来て下さい。
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