2012年10月24日

11/11(日)CAP STUDY 3「ビブリオテーク208.ext〜移動美術資料室がCAPにやって来る!」第6回 池長孟:神戸の大コレクター


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*全10回シリーズ、最終回の日程が変更になりました。
2013年 3月10日  アーティストの仕事を理解する(2):山口勝弘
  →3月31日(日)に日程変更しました。
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CAP STUDY 3
「ビブリオテーク208.ext〜移動美術資料室がCAPにやって来る!」
第6回 池長孟:神戸の大コレクター
【要予約】
2012年11月11日(日)15:00〜18:00
講師:森下明彦(メディア・アーティスト、美術・音楽愛好家)
参加費:¥500

池長孟:神戸の大コレクター

「フェルメール」がやって来ている神戸市立博物館。元銀行のこの美術館の白眉は、何といってもあの《聖フランシスコ・ザヴィエル象》(江戸時代初期/重要文化財)や狩野内善《南蛮屏風》(桃山時代/重要文化財)でしょう。これらを含め、この館の所蔵品の多くは、かって神戸の大コレクターといわれた池長孟【いけながはじめ】(1891~1955年)が収集したもの。

彼は1927〔昭和2〕年頃から、「日本で制作された異国趣味美術品」とされる南蛮美術のコレクションを開始し、それを体系的に整理し、研究書を発行しました。《聖フランシスコ・ザヴィエル象》を購入するために垂水の別邸を売却するなど、困難が続いたようです。1938〔昭和13〕年には自前の鉄筋コンクリート3階建ての池長美術館を建設。1940〔昭和15〕年以来、年に1回、4月と5月の2カ月間、一般に公開(有料)され、戦争が激化する1944〔昭和19〕年まで継続しました。

1922〔大正11〕年、外国を長期に遊覧してきた彼は、「欧米諸国の文物に接し、各地の美術館博物館を見たりする内に大に悟るところあり、帰国後日本の文化施設の貧弱さにはあきれはてていた。又欧米模倣の文化程度の低劣さには驚いていた」、と後年書きしるしています。美術館開館に当って彼がしたためた宣言は、それゆえ、かなり血気盛んです。いわく、「神戸のような国際大都市にして、美術館の一つも持たないということは、国民教養の程度も察せられて大きな国辱である」、と。ことは神戸一都市だけの問題ではなく、日本全体のそれであり、祖先が優れた芸術の偉業を残しているのに、「この頃の世間のザマはどうですか」、と畳み掛けています。

彼の収集魂を象徴する言葉は数々ありますが、次などは中途半端の私には全く耳が痛いものです。「系統をたてて集めるべし。雑駁な集め方は無意義なり。せぬ方がよろし。」

戦後、税金の支払いに困った池長孟は多くの作品を売りに出し、最終的には残った作品共々、神戸市に寄贈しました。コレクションの散逸を防ごうとしたのです。1951年7月、市立神戸美術館として再出発し、彼は顧問となり、収集品のさらなる整理と研究に従事します(その後、コレクションは1982年開館の神戸市立博物館に移され、旧美術館は神戸市文書館として現存しています。住所:中央区熊内【くもち】町1-8-21)。

池長の貢献はまだまだあります。植物学者の牧野富太郎を支援したり、1937〔昭和12〕年から翌年にかけて、神戸を始め、各地の様子をカラーの映画フィルムで撮影していた、などです。

2003年、神戸市立博物館で池長孟の業績を偲ぶ展覧会が開催されました。それから9年になります。神戸に居住し、あるいは、活躍の場を持っている方々に、先達といえる池長孟の仕事とその背景にある哲学を是非知って頂ければと思います。


資料リスト:
●池長孟著書
『紅塵秘抄』(筆名:池水瑠璃之助/1921〔大正10〕年/東京堂)
『戯曲 荒つ削りの魂』(1929〔昭和4〕年/弘文社)
『戯曲 開国秘譚』(1930〔昭和5〕年/弘文社)
『邦彩蠻華大寳鑑』(1933〔昭和8〕年/創元社)
『戯曲集 狂ひ咲き』(1933〔昭和8〕年/福音社)
『南蛮堂要録』(1940〔昭和15〕年/池長美術館)
『市立神戸美術館所蔵 南蛮美術総目録』(1955〔昭和30〕年/市立神戸美術館/1995年:東洋書院)

●絵葉書
「池長美術館絵葉書 第一輯」(3枚組)
「池長美術館蒐蔵品絵葉書 第一輯」(8枚組)
「池長美術館蒐蔵品絵葉書 第二輯」(8枚組)

●池長美術館カタログ
『紀元2600年記念開館陳列目録』(1940〔昭和15〕年/池長美術館)
『第二回展観目録』(1941〔昭和16〕年/池長美術館)

●評伝
高見澤たか子『金箔の港 コレクター池長孟の生涯』(1989年/筑摩書房)

●展覧会カタログ
神戸市立博物館『南蛮堂コレクションと池長孟』(2003年)

●その他
「建築と社会」(1940〔昭和15〕年6月)
池長孟君を偲ぶ会編『池長孟追憶志』(1955年/池長孟君を偲ぶ会)

森下明彦(メディア・アーティスト/美術愛好家)
フリーで美術と映像に関する研究を続けながら、美術資料室(神戸市)の開設公開を準備中。
また、国立国際美術館客員研究員として「中之島映像劇場」という名称の映像上映会を企画。

「caper7月号」のピックアップ記事 「ビブリオテーク208.ext〜移動美術資料室がCAPにやって来る!」今年度の開催に向けて。」はこちら、全10回分の日時、テーマ一覧はこちら、C.A.P.のニュースレター、2011年「caper6月号」のピックアップ記事「Bibliotheque 208主宰、森下明彦インタビュー」はこちらです。
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